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No.60美術鑑賞と新型コロナと

2020.04.27

美術鑑賞と新型コロナと

最近は新型コロナの流行で感染拡大が広がり、色々な分野に影響が出ています。仕事面では(個人の)確定申告の期限延長が国税庁から発表になり、顧問先の飲食店の売上が大幅に下がるなど影響が出てきています。新型コロナに罹らなくても経済的な損失が大きくなればその人の生活にも大きな影響を及ぼすことになり、それが国民全体ではなく特定の人たちが極端に起こるのであれば、その人たちに手を差し伸べる政策が必要になります。まだまだ悪化する可能性が大きく目を離せない状況です。

遠からず自分も影響を受けております。2~3月は確定申告処理で通常より多忙の上、花粉症も流行る時期なので体調を崩しがちな季節です。自分も花粉症のため毎年と言っていいほど体調を崩しており、今年も2月終わり頃から3月末頃までに咳やのどの痛みがあり、咳がひどい時は数日休んでしまいました。
(新型コロナの影響は凄まじく、「咳をしても一人」の俳句とは対照的に「咳をしたらコロナ」と思われるほど周りが敏感に反応し、こちらも後ろめたさと申し訳ないと思う気持ちはあるものの、ウイルス保菌者のように言われる辛さがあり、いつも以上に大変な季節となっています)

世間では公共施設の利用制限も始まり、美術館など人が多く集まる場所は閉鎖が目立つようになりました。
個人的に昨年の12月に上野の東京都美術館で行われていたコートールド美術館展を見に行きました。その後、愛知・神戸の美術館でコート―ルド美術館展が行われる予定でしたが、愛知は途中(3月1日)で中止になり、神戸は3月末から行われる予定が現在は延期になっているというネットニュースを見ました。
自分も平日の午前中に見に行きましたが、それでも大変な人混みだったので中止や延期もやむを得ないかもしれません。ただ、20年ぶりに日本に来た絵画を楽しみにしていた人には大変残念なことだったと思います。

このように海外にある絵画等を日本で見るためには海外から借りてくる必要があり、その対価を支払うことになると思われます。
具体的な契約等は分かりませんので、一般的な税務の話として海外の外国法人や非居住者から美術品を借り受けた対価として支払う使用料に源泉徴収が必要かどうか、またその取扱いがどうなるかを今回は説明させて頂こうと思います。
(上記の方法は、海外の法人や個人が日本で確定申告を行う事が難しいため、対価の支払者が納税義務者となって、支払う金額の一部を税額として徴収し納付することで、海外の法人や個人の納税を済ませる方法です。)

まず、その国と租税条約を締結しているかどうかで取扱いが変わってきます。

1、租税条約を締結していない場合
国内法である所得税法第161条第1項第11号(国内源泉所得)・第212条(源泉徴収義務)及び所得税法施行令第284条(国内業務に係る使用料等)並びに所得税基本通達161-39(備品の範囲)に記載されているとおり、<順を追って確認すると勉強になります>
備品である美術品等(著作権法上の著作物を除く。かなり古い場合は大丈夫。)を非居住者等から賃借し国内の業務のように供した場合は国内源泉所得となり源泉徴収が必要で、使用料として支払われる金額の20%(復興税込だと20.42%)の源泉税を徴収し税務署へ納付しなければなりません。

2、租税条約を締結している場合
租税条約と国内法に相違があり、国内法より課税範囲を狭めるときは、租税条約が優先される為、その租税条約の内容により取扱いが変わってきます。各国との租税条約の形式はだいたい同じような雛形となっていて、今回の場合は「第12条(使用料)」の記載がどうなっているかですが、条項上に「産業上、商業上若しくは学術上の設備」のこの「設備」が国内法の備品と原文上(英語だと思いますが)同じ意味になるらしく、その設備の使用料に関する規定が

①使用料条項に含まれている場合は軽減税率の規定も含め源泉徴収することになると思われます。
②使用料条項に含まれていない場合は、使用料としての源泉徴収は必要なく、その賃借料に対する対価を事業所得条項として適用し、国内に恒久的施設がなければ課税されない為、源泉徴収もありません。

どちらも租税条約に関する届出書(様式は別)を所得の受領者(美術品を貸した方)が対価の支払者(美術品を借りた方)を通じて税務署へ提出する必要があります。

今回のコート―ルド美術館はイギリスにある美術館である為、日英租税条約の条項がどのようになっているかですが、設備の使用料に関する規定が使用料条項に含まれていない為、上記2、②の区分に該当し源泉徴収は必要無いものと思われます。
これが、イタリアに美術館があれば、日伊租税条約で使用料条項に含まれている為、上記2、①の区分となり、軽減税率の10%の源泉徴収が必要となります。(どちらも届出書必要) これ以外に消費税の有無に関係する内外判定もありますが、契約等により変わってくるため、今回の説明はパスさせて頂きます。

海外との取引はこのように各国との租税条約等を確認した上で判断するため、契約等がどうなっているか細かく確認することが大切になってきます。

 最後に仕事が忙しい時に聞く曲が時々あります。今も心と体が疲弊していますが、その中で聞いている曲を皆さんに紹介したいと思います。
<森山直太朗の「どこもかしこも駐車場」>です。何年か前の曲らしいですが、FMラジオを聞いていた時に流れていました。よろしかったらどうぞ。