No.154令和7年度税制改正要望について
2024.10.17

例年夏が過ぎた頃に財務省のホームページを見ると、各府省庁からの次年度へ向けた税制改正要望事項が一覧にまとめられたものが公表されています。
今年は年初から災害や事故、日経平均の騰落や衆議院選挙など、今後の政治に関係する出来事が多くあるような気がします。
税金も政治に大きく関係するものですが、年末の与党税制改正大綱の策定を前に、各府省庁からはどのような要望が出ているのでしょうか。
既存の税制の延長等は除き、新設の要望事項のうち、主なものを紹介したいと思います。
<金融所得一体課税の一本化>
1 投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境を整備する観点から、損益通算の範囲をデリバティブ取引・預貯金等にまで拡大すること。
2 損益通算範囲の拡大に当たっては、特定口座を最大限活用すること。
3 制度導入に当たっては、個人投資家の利便性や金融機関の負担について十分配慮すること。
また、暗号資産取引に係る課税上の取扱いについて検討を行うこと。
→貯蓄から投資へ促す施策のひとつといえます。
<上場株式等の相続税に係る物納要件の見直し>
・納税者が上場株式等の相続に係る物納を利用しやすいよう特例を措置し、納税環境の整備を図る。また、上場株式等に係る相続税評価方法等の見直しを行うことにより、上場株式等と他の資産との間における相続税に係る負担感の差を解消する。
→こちらも貯蓄から投資へ促す施策のひとつといえます。
<預貯金口座付番制度におけるマイナンバーの告知等に係る所要の措置>
・現行、一定の税法上の手続において、預貯金者は金融機関に個人番号や氏名、住所等を告知し、金融機関は当該告知があった場合には、本人確認を行い、本人確認をした旨を記載又は記録した帳簿書類を保存しなければならないこととされている。
新たな預貯金口座付番制度により、2024 年度末頃に預貯金者は1つの金融機関又はマイナポータルから預金保険機構を介して一度に複数の金融機関の口座へ付番することが可能になるが、かかる場合には預貯金者が金融機関に直接個人番号を告知していないため、税法上の告知等の要件を満たさず、改めて告知等の必要が生じる。
また、金融機関は、新たな預貯金口座付番制度により預貯金者の最新の氏名等について、預金保険機構を介して取得できるが、かかる場合には預貯金者が金融機関に直接預貯金者の最新の氏名等を告知したものではないため、税法上の告知等の要件を満たさず、改めて告知等の必要が生じる。
したがって、新たな預貯金口座付番制度に基づき付番された個人番号について、税法上の告知等の要件を満たすよう所要の措置を講じること等により、国民に生じうる負担を解消する必要がある。
→上記のような制度が始まるようです。
<公的年金制度の見直しに伴う税制上の所要の措置>
・公的年金制度については、「経済財政運営と改革の基本方針 2024」(令和6年6月 21 日閣議決定)において、「公的年金については、働き方に中立的な年金制度の構築等を目指して、今夏の財政検証の結果を踏まえ、2024 年末までに制度改正についての道筋を付ける」とされている。女性や高齢者の就業拡大や、家族構成やライフスタイルの多様化、人手不足の中での労働力確保の要請等を踏まえ、次期年金制度改正に向けて、社会保障審議会年金部会において議論・検討を行い、その結果等を踏まえて働き方に中立的な年金制度の構築等を目指し、公的年金制度の持続可能性を確保する。
地方公務員共済組合制度においても、働き方に中立的な年金制度の構築等を目指し、組合員や年金受給権者である地方公務員等(以下「地方公務員等」という。)の生活の保障又は安定を図ることを目的とする。
→厚生年金も働き方に中立な制度になるように変わるようです。
上記のように、税制改正要望には、その時の世相や時代が色濃く反映されていると思います。
また、税理士会でも、毎年税制改正に関する建議書をとりまとめています。そちらのほうも是非ご覧いただけたらと思います。
よろしくお願いします。