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No.1192023年度改正が注目される個人税務

2022.12.05

2023年度改正が注目される個人税務

年末が近づいてきてまいりました。
いかがお過ごしでしょうか。

さて、税務業界では年末といいますと、翌年の税制改正大綱の発表時期でもあります。
ここ数年、贈与に関する税制にメスが入るという噂がありつつも、大きな変化はない状況でした。
本年のとくに秋口からは、個人に関する課税方式について、頻繁に改正内容の報道があり、関心をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
今回は改正の可能性がある個人税務で注目されている論点を取り上げてみました。

<所得税>
・NISA制度の改正
2024年に現在予定されている2階建て式NISA(つみたてNISA充当後に一般NISA設定可能)を撤回し、現在の一般型NISA(120万円・非課税期間最長5年間)、つみたてNISA(40万円・非課税期間最長20年間)の年間限度額を引き上げ、期限も無期限にする方向。
・iDeCoの加入可能年齢を65歳から70歳に引き上げ方針。
・金融商品の損益通算の範囲拡大(金融庁要望ベース)

岸田内閣は組閣後、金融所得の見直しを常に言及してきました。
積立方式という手軽さから、現在すでに世間に幅広く利用されつつあるNISA、iDeCo制度の緩和で、より多くの国民に長期の資産形成の実現への取り組みを勧めることで、将来的に年金以外の老後資金の確保をさせる試みと思われます。
金融商品の損益通算の範囲拡大については、通算対象をデリバティブ取引や預貯金等にまで拡大することを要望する声があり、実現すれば今までよりも損失リスクの減少が期待されます。一方、導入時の手間はかかることが想定され、その軽減目的のため、金融商品とマイナンバーとの紐付けがより進んでいくかもしれません。

<贈与税>
・暦年課税制度の贈与財産について、生前贈与加算の対象期間の延長の検討
→現行では相続開始後3年からのところを、5~10年を目安に延長
・相続時精算課税制度について、適用者が少額贈与を受けた場合の課税のカット
(暦年課税と違い、いったん相続時精算課税適用者となると少しの贈与でも課税されてしまい、使い勝手がよいとは言えない面があるため)
・教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与の特例を廃止
→現在の適用期限は、令和5年3月31日まで。
一括贈与で非課税を受けられる制度のため、創設当初は多くの適用があったが、近年は適用件数が減少していることや、格差の固定化の指摘があったため。

贈与税の面では、いよいよ暦年課税の足し戻し期間について具体的な話し合いが始まるようです。個人的には、あまり長期間なのはいかがなものかと思います(相続税計算が大変になるのが最大の理由ですが。。。)。
贈与税がかからないように110万円以下の贈与をしたとしても、生前贈与加算の対象期間内にされたものは相続税を課されてしまうため、使い切れる程度の贈与を受けて、後になって積み上げで課税をされてしまうのは納税者に酷ではないかと。

結婚・子育て資金の贈与については、適用件数が多くないという話を耳にしていたので、廃止の検討はされるのかなと思いました。

教育資金贈与については、廃止すると世代間の教育格差が出てしまいそうで、それもどうなんだろうと…。
私の親族で本年実行した人がいますが、祖父母から孫への贈与は、離れて暮らしている場合は思った以上に時間がかかる(贈与者が高齢なので、説明に時間がかかったり健康状態に気をつけないといけなかったりで、本当に先に進めない)というのを痛感しました。
今後、教育資金贈与の非課税の利用を検討される方は、年末年始に家族で集まった際に、事前準備・作業計画を万端にされることをお勧めいたします。

上記に列挙したものは、報道ベースのため予想にすぎませんが、税制改正大綱が国民全体にとって受け入れやすい内容で発表されることを願っています。