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No.110四半期報告書の廃止

2022.06.30

四半期報告書の廃止

みなさまは、食料加工品や飲料品を購入する際に、何を見て買うかどうかを判断するでしょうか。パッケージやペットボトルのラベルには、値段、内容量、原産地、賞味期限、原材料名、エネルギー(kcal)、栄養成分、アレルギー表示、保存方法、パッケージそのものの材質などが記載されています。中には国産原料使用や無添加、無着色、100%果汁、特保といった記載もあるかもしれません。義務表示もあれば任意表示もあります。

では、投資家が株に投資するときに何を見て投資するでしょうか。株価のチャート、PER、PBR、配当利回り、決算短信、有価証券報告書、ホームページ等あります。食品に比べてどれくらいの情報を見ているかは各個人によりさまざまですが、今回、判断要素の一つかもしれない四半期報告書が廃止される方針のようです。
金融庁は4月18日に開く金融審議会で、開示の事務負担軽減化のために、第1四半期及び第3四半期の四半期報告書を廃止して四半期の決算短信に一本化する方針としているようです。

そもそも決算短信とは、上場会社の決算の内容を開示した書類で、上場会社に義務付けられているものです。決算短信・四半期決算短信の作成要領等は日本取引所グループのHPに記載されています。この作成要領等によると、決算短信はサマリー情報と添付資料からなりますが、連結貸借対照表や連結損益計算書等は添付資料として位置づけられています。また、開示のタイミングは「決算の内容が定まった場合は、直ちにその内容を開示することが義務づけられています。」とあります。

一方で四半期報告書は金融商品取引法に基づくもので、四半期連結財務諸表等を含む所定の決算内容を四半期決算日後、45日以内に開示することが義務付けられています。

四半期報告書の開示が始まった当時と比べて開示内容の省略化が進み、四半期決算短信と開示内容が似通ってきていることも一本化される理由かと思います。これによってどれだけ負担が軽減化されるかは各企業によって様々ですが、多くの企業は軽減化の方向に進むでしょう。

また、一本化の背景には四半期開示については経営者や投資家の短期的な利益志向を助長しているという意見も出ているようです。四半期決算の開示は義務であるため開示する、と言ってしまえばそれまでですが、株を発行している立場である上場会社が自ら四半期を開示するか否か開示方針を決めて、その開示方針に納得した投資家がその株を保有する、ということも企業のあり方といった多様性の観点から考えられるのではないかと思います。