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No.64最高の敬意を

2020.07.01

最高の敬意を

私には忘れられないテレビ番組がある。それはとあるプロ野球選手の復活劇を取り上げたものである。残念ながら、あまりにも古いため、ネットで番組名とその選手の名前で検索してもひっかからない。

その選手は現役時代、脳に「とある病気」を抱えたため第一線から離脱し、治療に入った。手術とその後のリハビリは壮絶なものだった。プロの世界で活躍していた体を思うように動かすことができず、病室では苛立ち、リハビリする気持ちには全くならなかった。

そんな不貞腐れていたある日、渋々とリハビリ室にいくと、プロスポーツ選手でもなんでもない人たちが必至にリハビリに耐えている姿をみることになる。そのとき、初めて自分の幼稚さに気づき、それからは心を入れ替え、入院仲間と一緒にリハビリに汗を流し、最終的には、プロ野球界では一人もいない、脳の障害から現役復帰を果たした。

その選手は復帰した後、ユニフォーム姿で番組内でこのように話した。
「私は小さいころから体が大きく、体に絶対的な自信があった。だから、体が弱い人を心では馬鹿にしていたんだ」。

しかし、自分が大病を患い、リハビリで汗や涙を流す他の人たちをみて、自分の今までの態度を恥じ、それ以降は心を入れ替えた。復帰した後のその選手の言葉には、多くの人に支えられたことへの心からの感謝の気持ちが確かにあった

世の中には恵まれた体格で産まれてくる人もいれば、例えば生まれながらにして白血球の数が少ない人だっている。さらにその後の環境の違いで、10代から体のことで悩み、人とは違う生活・人生を送らざるを得ない人もいれば、まったく病気という病気にかからずに過ごしている人もいる。そして、その差を埋めたくても、根本的に埋めることができない。だから、悔しいけれども自分の限界を理解し、すこしでも健康を維持できるように工夫するしか方法がない。

病気の程度、予後の判定は病気の種類によって違うが、病気を患う本人の「不安や恐怖」は言葉に表現することが難しいくらいに深いものであり、その家族は「第二の患者」となるほどに追い込まれる。

私は、その「不安と恐怖」をとてもよく知っている。だからこそ、その不安と恐怖と戦う人に心を寄せてきたし、無理解な者に対しては相手が誰であろうが残酷なまでに厳しく接する。そして、そんな気持ちを少しでも救ってくれた医療従事者、とりわけ看護師の方々には心からの感謝の気持ちを伝てきたし、その気持ちは今でも変わらない。そのため、私は看護師の「顔」と「名前」を覚えている。献身的で丁寧に対応してくれた看護師の方々や病室で大泣きしている私の背中をさすってくれるような看護師の名前を忘れるわけがないではないか。

私は、人の心を救おうとする医療従事者のみなさんをいつも心の底から尊敬している。
彼ら彼女らに過度な負担を強いらせる、新型コロナウイルスが撲滅する日が1日でも早く来ることを願ってやまないし、最前線で戦う者に対する差別は絶対に許さない。