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No.47数学者の著作「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」を読んで

2019.06.28

数学者の著作「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」を読んで

まず、人工知能のことをAIといいますが、この人工知能は現時点では存在していません。人間の知的活動を四則演算で表現することは技術的に不可能だからです。数学で数式に置き換えることができるのは、
① 論理的に言えること
② 統計的に言えること
③ 確率的に言えること
の3つであり、われわれが認識している世界を、この3つで表現することはできないからだそうです。

存在していないAIに対して、すでに存在しているのはAI「技術」の方です。AIを実現するための音声認識技術、画像処理技術、自然言語処理技術をいいます。具体的にはiPhoneなどに搭載されているsiriやお掃除ロボです。

ところで、シンギュラリティという言葉をご存じですか?これは、「人間の能力を超える時点」をいいます。しかし、これはあくまでも簡単に理解するための解釈であり、正確には「人間の力を借りずにAIが自らの能力を超えるAIを作り出すことができるようになった時点(技術的特異点)」をシンギュラリティといいます。といわれてもピン来ませんね。
私は映画ターミネーターのように、コンピューターが自我を持つことだと勝手に理解しています・・・。

しかし、上記の数学の限界を理由に、このシンギュラリティは少なくとも今のAI技術の延長線上では生じえないとされています(少なくとも数学者の中では)。安心しましたか?AIというと、人間をいつのまに乗っ取ってしまう怖いイメージを持ちませんか?そんな不安は不要なようです。

しかし、AI技術の進歩はすさまじく、作者が推進していた「東ロボくん」(ロボットが東大に合格できるように研究する人工知能プロジェクト)は、東大は無理でしたが、一部の私学にはすでに合格しています。本の中では学校名まで挙がっています。
さすがに学部名までは挙げていませんが・・・。
もし、このAI技術が労働市場に解き放たれたら・・・過去に経験した経済不況や技術革新のときとは比べ物にならない大きな影響がホワイトワーカーの間に生じることを本書は警告しています。「失われた仕事」に就いていた人が次の「新しく生み出された仕事」に就くまでの時限的な影響ではなく、もう「仕事そのもの」に就けなくなる可能性すら指摘しています。
大学入試試験という極めて狭い世界とはいえ、大学進学を希望する学生の上位20%のところまでAI技術は到達しています。極論すると、それより下位の学生はすでにAI技術により仕事を奪われる可能性すらあります。

コンピューターが得意としているのは計算であり、決まった枠(フレーム)の中では人間よりも圧倒的に速いスピードで、かつエラーすることなく、さらに人間よりも安価なコストで目的を達成できるため、仕事を奪われる危険性は大いにあります。

そこで登場するのが、AIによって消えてしまう職業ランキング。会計士・税理士はかなり上位にランキングされています。もっと大きくとらえて経理業務全般ととらえてもいいかもしれません。私たちの仕事は一定の枠の中で単純に反復しているだけの仕事だと誤解されているようです。

確かに私たちの仕事には、ルーティン化された作業があり、それをこなすために多くの時間を割いている現状があります。しかし、雑然とした状況が整理されて定型化・ルーティン化された状態になれば、それが一定の仕事の成果であり、お客様に対する一つのサービスの結果であるとさえ思います。そして、この段階に到達した際には、担当者がだれであるかは関係なく、だれでもでき、さらにいえば人間が担当する必要すらないと思うのです。やらなければいけないことがたくさんあるにもかかわらず、人間がしなくてもいいことにまだまだ多くの時間を使っているのです。

だからこそ、私はAI技術がこの業界に解き放たれることを心から待ち望んでいます。既存の会計・経理・税務ソフトは、これ以上の向上が見込まれないほどに成熟しています。既存のソフトを蹂躙してしまうほどのAI技術が世に放たれた時、経理環境に何が起きるかを楽しみに待っています。